30代半ばで海外で働くことになってから、ビッグ4(BIG4)と呼ばれる国際的な4大会計事務所(四大会計事務所)での経験が、日本で感じていたのよりもずっとパワフルなキャリアであると感じました。
そこで、自身の体験も織り交ぜながら、ビッグ4会計事務所への就職の魅力を整理してみました。
これから会計資格(公認会計士、米国公認会計士)を取得しようと考えている方、会計資格の取得へ向けて現在勉強中の方の参考になれば嬉しいです。
当記事は、2019年1月時点の情報を参考にしています。
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ビッグ4(4大会計事務所)とは?
4大会計事務所は、国際的に展開する4つの巨大会計事務所グループのことで、通称としてビッグ4(BIG4)とも呼ばれています。
1980年代まではビッグ8と呼ばれる8大会計事務所がありましたが、1990年代以降の合併等によって4つの大規模な国際会計事務所グループとなりました。
ビッグ4のそれぞれが、監査・税務・経営コンサルティングを提供するコンサルティング会社あるいはグループとして運営されています。
これらの日本での提携先は、会計監査に関しては監査法人、税務業務については税理士法人、経営コンサルティングについては複数のコンサルティング会社によって運営されています。監査法人については、四大監査法人とも呼ばれています。
以下は、これらの関係を表にしたものです。
【4大会計事務所と日本での提携先・グループ会社】
4大会計事務所(ビッグ4) | 日本の 監査法人 | 日本の 税理士法人 | 日本の主な コンサルティング会社 * |
デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu) | 有限責任監査法人トーマツ | デロイト トーマツ税理士法人 | デロイト トーマツコンサルティング合同会社 |
プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers) | PwCあらた有限責任監査法人 PwC京都監査法人 | PwC税理士法人 | PwCコンサルティング合同会社 |
アーンスト・アンド・ヤング (Ernst & Young) | EY新日本有限責任監査法人 | EY税理士法人 | EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 |
KPMG (KPMG) | 有限責任あずさ監査法人 | KPMG税理士法人 | KPMGコンサルティング株式会社 |
*: 日本におけるコンサルティング会社は、それぞれのグループで複数あります。上記はその代表的なものです。
国際グループとしての4大会計事務所の売上げは非常に大きく、Top 20 International Networks 2018によると、トップのデロイトでUSD43,200m(約4.8兆円)、第4位のKPMGでUSD26,400m(約2.9兆円)となっています。第5位のBDOtとなると売上げUSD8,133m(約0.9兆円)で、第4位のKPGMのおよぞ3分の1程度です。(いずれも1USD=110円として換算)
4大会計事務所が5位以下を大きく引き離していることからも、文字通り「ビッグ4」というわけです。
ビッグ4会計事務所は世界では超人気の就職先
日本の人気就職ランキングと呼ばれる一般的なランキングには、日本の監査法人等はほとんど入ってきません。
しかし、海外では、ビッグ4は、いろいろな統計ランキングで人気就職先としての常連となっています。
たとえば、企業ブランディング調査会社であるUniversumによるWorld Most Attractive Employers 2018によると、ビジネス専攻の学生に人気の就職先ランキングにおいて、ビッグ4はいずれもトップ10位以内にランキングされています。
- Goldman Sachs
- EY(Ernst & Young)
- Deloitte
- KPMG
- PwC(PricewatersCoopers)
- Apple
- J.P.Morgan
- McKinsey & Company
- Microsoft
次のコーナーでは、世界ではなぜビッグ4会計事務所が人気の就職先であるのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
ビッグ4会計事務所に就職するメリット
ここでは、日本の4大監査法人への就職を例として、ビッグ4会計事務所へ就職するメリットを詳しく見ていきましょう。(尚、ビッグ4の税理士法人への就職も、共通する部分が多いので、税理士資格をとってビッグ4の税理士法人への就職を考える方も参考にしてください。)
充実した研修トレーニング
ビッグ4会計事務所では、会計士というプロフェッショナル人材が提供するサービス品質の基盤になることから、充実した研修トレーニングが用意されています。
たとえば、PwCあらたの研修プログラムやトーマツの「人財」こそがトーマツの品質の基盤などからわかるように、ビッグ4に就職することで、このような体系だった専門トレーニングと多種多様なカリキュラムに参加する機会を得ることになります。短期間で一人前のプロフェッショナルへと成長していくことができるのです。
デロイトが"Deloitte University"と呼ばれるリーダー育成のための「場と機会」を提供するトレーニング施設を世界3ヵ所にもっているように、ビッグ4のトレーニングでは、専門的な研修だけでなく、リーダー育成にも力を入れています。世界標準の人材育成プログラムをベースに成長していけるところが、ビッグ4へ就職する魅力のひとつです。
凝縮された経験
プロフェッショナルファームとして、ファームにより多少の差はありますが、スタッフ⇒シニア⇒マネージャー⇒シニアマネージャー⇒パートナーへと進んでいくキャリア体系が明確です。そのため、一般企業と比較して、昇進にかかる年数がはやく、その意味で凝縮された経験が可能になっています。
たとえば、EY新日本のキャリアパスやキャリアプログラム、PwCあらたのキャリアの広がりなどからわかるように、プロフェッショナルとしてのキャリアを構築&継続していけるキャリアパスと支援体制があります。
さらに、自分自身で専門分野を選んでキャリアの方向を決めていける要素が大きいことや、他部門やグループ会社への異動などを通じて、幅広いキャリアの選択肢が開けています。
実際に、当初は監査部門でスタートして、その後に税務やコンサルティング部門へ異動するケースは多くあります。仕事をしていく中で、自分の興味や適性に気付いて、自分に合う分野に進める道が用意されているのは、大きな組織であるビッグ4ならではですね。
海外研修制度・海外駐在員制度
グローバルの短期研修、さらにはグローバルの事務所で働くことができる海外研修制度や海外駐在員制度を通じて、海外経験を積むこともできるようになっています。
たとえば、EY新日本のグローバル人材育成や、トーマツのキャリアサポート【グローバル】などからわかるように、グローバルの事務所での1年半~2年程度の海外研修や3年~4年の海外駐在など、ビッグ4国際会計事務所ならではの貴重な海外勤務経験を積むチャンスが開けています。
明確な海外研修・海外駐在のプログラムのあるビッグ4は、大手の企業でいつになるか見えない海外駐在を待つよりも、自分自身でキャリアを実現させていくことができる要素が大きいので、海外志向のキャリアを目指す人にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。

ダイバーシティ(多様性)の尊重
ビッグ4国際会計事務所は、いずれもダイバーシティ(多様性)を尊重・重視していることで知られています。その流れを受けて、日本の4大監査法人においても、ダイバーシティを積極的に進めていく方針が掲げられています。
たとえば、トーマツの多様性の尊重においては、フレキシブル・ワーキング・プログラム(週3日・4日などの短時間勤務や休職制度など)、在宅勤務、複線型キャリアパス、企業内保育所など、多様なライフスタイルをサポートする制度が紹介されています。
PwCあらたのダイバーシティ&インクルージョンにおいては、ジェンダー・ナショナリティ・障害者支援への取り組み、働き方改革に加えて、LGBT支援のプログラムも紹介されています。
日経新聞にも、「監査法人に「働き方改革」の波 人手不足で福利厚生充実 」として、監査法人が「働きやすさ」をアピールして人材確保へとつなげている状況が掲載されています。
キャリアを長く続けていく視点からも、フレキシブルな働き方ができる会計キャリアは、いろいろなキャリアの可能性を与えてくれるものと言えそうですね。

快適なオフィス環境
ビッグ4国際会計事務所の海外オフィスと同様に、日本の4大監査法人もファーストクラスのオフィス環境を提供しています。
たとえば、EY新日本ではEY Japanのメンバーファームが「東京ミッドタウン日比谷」に新東京オフィスを開設で紹介されているように、最新のテクノロジーやデザインを取り入れたオフィス環境です。
また、PwCあらたでは、働き方改革で紹介されているように、PwCジャパングループの大手町の新オフィスがグループのプロフェッショナルの「コラボレーションの場」としてデザインされている最新オフィスです。
オフィス環境を重視したい人にとっても、ビッグ4は最先端の環境で仕事をできる選択肢と言えるでしょう。
ビッグ4での経験の先にあるもの
ビッグ4での経験をもとに転職をする場合、幅広い産業分野での会計プロフェッショナルとしてのキャリアはもちろん、ビジネスコンサルティング、ITコンサルティング、経営コンサルティングなどでの多彩なコンサルティング・キャリアにもつながります。
一般企業においても、会計・税務・財務分野だけでなく、内部監査・コンプライアンス・経営企画など、経営により近い部門へのキャリアへ進む場合も多くあります。
海外の多国籍企業の多くで、ビッグ4経験が応募の条件として望ましいという求人が多いのと同様に、日本の外資系企業のAccounting、Finance、Financial Plannninng部門においても、ビッグ4経験者を対象にしている求人募集を多く見かけます。つまり、ビッグ4での経験があることが、キャリアの選択肢を広げ、可能性を増やすことにつながります。
会計士のキャリアパス&キャリアシフトについては、以下の記事も参考にしてくださいね。
ビッグ4での経験は貴重な公私ネットワーク
ビッグ4会計事務所では、ビッグ4事務所を辞めていった人たちを、"Alumni"(卒業生の集まり)として、ビッグ4会計事務所自らがネットワークをサポートしています。
ビッグ4事務所にとっては、卒業したメンバーとのネットワークが、メンバーの転職先の企業とのつながりに発展します。卒業したメンバーにとっては、旧知のメンバーとのネットワーキングであると同時に、新たなビジネスやキャリア発展の機会へもつながり、公私にわたる貴重なネットワークになっていきます。

会計資格取得を目指そう
海外では超人気のビッグ4会計事務所への就職ですが、2019年現在の日本においては、会計士業界は人手不足の状況が続いており、売り手市場といわれています。そして、今しばらくはこの状況が続く可能せいが高いと考えられています。
公認会計士試験、米国公認会計士(USCPA)試験に合格することで、ビッグ4就職への道が大きく開かれますから、この点では、日本は会計キャリアを目指そうという人にとっては、よいタイミングが来ていると言えるでしょう。
次のコーナーでは、日本の公認会計士と米国の公認会計士の「どちらの資格を目指すべきか?」&「資格合格のための専門学校選び」のポイントを見ていきましょう。
米国公認会計士(USCPA)を目指す場合
米国公認会計士(USCPA)資格は、日本の公認会計士試験とは異なり、基本的に競争試験ではなく絶対試験(正答率が合格基準以上であれば合格)です。そのため、きちんと受験準備の勉強と対策をすることで、着実に合格を目指していくことが可能です。
日本の公認会計士試験と比較した場合に、特に以下のような希望を持っている場合に米国公認会計士(USCPA)資格をおすすめしたいです。参考としてください。
- 世界で通用する資格を取得したい:米国公認会計士資格は、米国のみならず、他の多くの国々でも相互に資格が認められている世界に通用する資格です。
- 働きながら受験準備をしたい:仕事を継続したまま資格を目指したい場合には、USCPA試験はおすすめの資格です。
- 英語を活かして転職したい:「多国籍企業・外資系企業で働きたい」「海外勤務・海外就職も視野に入れたい」という場合にUSCPA資格が武器になります。
- 経理財務分野でのキャリアアップへつなげたい:経理財務分野で仕事をしている人が、USCPA資格を得ることで、仕事の専門性を増すことができます。
- 経理財務分野へのキャリアチェンジ・キャリアシフトを目指したい:USCPA資格を武器にキャリアの方向性を変えたいと考える方も多くいます。
【社会人の場合】
既に社会人の場合には、会計キャリアでのキャリアアップまたはキャリアシフト・キャリアチェンジを考えるときに、USCPA資格はとてもパワフルなサポートになります。
実際に、多くの人が実際に働きながらUSCPA資格を取得しています。年齢的にも20代だけでなく、30代・40代の人が転職を有利に使える資格として、幅広い世代がチャレンジしている資格です。

【大学生の場合】
最近では、大学生がUSCPA試験に合格して新卒で監査法人就職をめざす例もあります。実際に、PwCあらたでは、新卒者を対象とする育成採用制度を設けています。
米国公認会計士育成採用(USCPA)制度紹介 - PwCあらた有限責任監査法人
米国公認会計士(USCPA)の専門学校選びのポイント
USCPAの受験予備校としては、受験サポートと学校運営のトータルの視点から選ぶことが重要です。特に、以下の6つの条件が学校選びのポイントです。
- 合格実績が豊富にある:アビタスは1995年の開校以来、日本人がUSCPAを効率的に目指せる学習プログラムで圧倒的な合格実績を誇ります。
- 通学やeラーニングなど受講形態を選べる:通学を学習ペースにしたり、自宅でeラーニングで学んだり、自分に合う学習方法で勉強していけます。
- 受験資格を満たすためのサポートがある:受験資格を満たす単位取得を並行して進めていけます。
- ライセンス取得へ向けたサポートもある:個々人の状況に応じてライセンス取得しやすい州での申請サポートも提供しています。
- 学校運営に実績がある:USCPAプログラムはもちろん、国際資格取得の受験予備校として20年以上の実績があります。
- 就職のサポート体制がある:監査・経理の求人に強い人材紹介も行っています。
この5つの条件を満たすUSCPAの受験予備校として、「アビタス」 をおすすめします。
アビタスは、定期的に無料の説明会(新宿、八重洲、大阪、名古屋)を開催しているので、USCPA受験資格等に関する最新情報を確認することもできます。
日本の公認会計士資格を目指す場合
日本と米国の会計士資格を比較した場合、特に以下のような希望を明確に持っている場合には、日本の公認会計士資格をおすすめしたいです。参考としてください。
- 日本の監査法人でパートナーを目指していきたい
- 上場案件やベンチャーなどのプロジェクトに参画したい
- 日本の上場会社の役員・CFOを目指したい
- 働く場所について、大都市・地方都市・海外など幅広い選択肢を持ちたい
- 将来的には独立や起業も視野に入れている
ただし、公認会計士は狙い目資格か?~実質の合格率からわかることでご紹介したように、ここ数年の日本の公認会計士試験の最終合格率は10%~11%台で推移しており、難関の資格です。
そのため、「日本の公認会計士試験が競争試験的な要素が多いことを承知の上で、受験勉強に取り組めるか?」という点をしっかり考える必要があります。
まずは専門学校の資料を取り寄せて、公認会計士試験についての情報収集からスタートしましょう。
公認会計士の専門学校選びのポイント
公認会計士を目指す専門学校は、試験勉強の長期間にわたって利用していくことになります。何よりも「試験合格」を達成できることが重要ですから、ちょっとした金額の違いよりも、自分に合う学校をじっくり選ぶ視点が重要です。
資料取り寄せだけではなくて、可能な限りセミナーやイベント、無料体験入学などに参加しましょう。実際にはWebで受講をする場合でも、学校の学習サポート体制などを確認する意味で、可能な限り足を運びましょう。後悔や迷いを残さない学校選択が大切です。
日本の公認会計士は長期間のコースが多くなっています。迷う場合には、いきなり長期間のコースを始めるのではなくて、まずは簿記2級を取得してみるのも1つの方法です。簿記2級レベルまで勉強すると、受験に対する覚悟や自分の適性など見えてくる部分がありますから、当初よりもどちらの資格を目指すかを決めやすくなっているでしょう。
最近では、監査法人の人手不足を反映して、試験合格前に採用する育成制度やトレーニー制度を設けているところもあります。状況によっては、このような制度を利用するメリットも大きいですから、合わせて検討してみるとよいでしょう。
公認会計士育成採用(JCPA)制度紹介 - PwCあらた有限責任監査法人
監査トレーニー(中途・第二新卒)募集 - EY新日本有限責任監査法人
まとめ
世界で人気のビッグ4への就職を実現されるステップとして、公認会計士資格・USCPA資格はとても有効です。
大学生であれば、まずは自分の状況に合う資格として公認会計士なのかUSCPAなのかをじっくりと考えてください。その過程で専門学校の資料を取り寄せたり、セミナーへ参加したりして、資格に関する知識を深めていってくださいね。
社会人であれば、多くの場合でUSCPAが有効な選択肢となるでしょう。
当記事が、これから公認会計士・USCPA取得を考える方にとって参考になれば幸いです!