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【海外移住ベーシック⑤】《外国籍の取得・日本国籍を失う》《二重国籍・日本国籍の選択》に関して

【海外移住ベーシック⑤】《外国籍の取得・日本国籍を失う》《二重国籍・日本国籍の選択》に関して

マリー

自分で永住権を取得してオーストラリア移住した経験あり。海外に住んで働いて《人生の選択肢》が増えました。「外資系転職」「国際キャリア」「海外移住」に関する情報をお届けします。

前回の海外移住ベーシック④では、海外の長期滞在ビザ・永住ビザの留意点についてご紹介しました。

今回は、永住権からさらに一歩進んで、外国の国籍を取得する場合の考慮点について説明いたします。

  • 自国が二重国籍を認めている場合
  • 日本人が他国の国籍を取得する場合

海外の永住権取得を考えている方にとっては、はやい段階で概略だけ知っておくとよい内容です。移住プランの参考にしてくださいね。

当記事は、2021年6月の情報を参考にしています。一般的な基礎情報に過ぎませんので、いろいろな決断に際しては、最新の情報を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを得て、総合的に判断するようにしてください。

 

 

 

 

自国が二重国籍を認めている場合

よく海外のスポーツ選手なども、もともとの出身国と移住先の国の両方の国籍を持っていることなどが放送されますね。他の国の人々で、複数国の国籍を持っているケースは珍しくありません。

これは(日本を含む一部の国を除いて)多くの国で「二重国籍が認められている」、つまり他国の国籍を取得しても「自国の国籍には影響なし」という状況だからです。

細かくは国により異なりますが、多くの国で、永住権保持者としてその国に規定の期間を居住すると、その国の市民権(国籍)を申請できるようになります。

そのため、他国の永住権を取得した人の多くが、その国で規定されている規定の要件の年数を居住後に、市民権(国籍)を申請してその国の国籍を得ます。

結果として、もともとの自国の国籍はそのままで、追加で新たに取得した国籍を新たにもつことになり、二重国籍の状態になります。

国籍を取得後は、その国の国民になるので、その後にその国を長期で離れても国籍を失うことはありません。この点は、永住権の場合と大きく異なる点です。

しかし、日本人が新たに他国の国籍を取得する場合には、上記のようなわけにはいかず、下記の通りに別の留意が必要となります。

 

日本人が他国の国籍を取得する場合

日本人が他国の国籍を取得する場合

 

日本には、国籍に関する「国籍法」という法律があります。

この国籍法の第11条の条文は、このようになっています。

【国籍法 第11条 (国籍の喪失)】 

第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。

参考: 国籍法(e-Gov)

 

つまり、海外の国籍取得において、国籍法第11条が当てはまる場合には「日本国籍を失う」ことになります。

より具体的には、「自己の志望」や「外国の法令により」外国の国籍を選択した場合、国籍を取得した国においては二重国籍が認められていても、日本の国籍法においては二重国籍は認められておらず「日本国籍を失う」ことになる点に、注意が必要です。

そのため、外国籍を取得して国籍法第11条により「日本国籍を失った」方が、日本に長期(90日以上)の滞在をするときには、外国人が日本に長期滞在するときと同様に、日本の「在留資格」が必要となります。

ときに、日本国籍を失っている方が「手続きをしないままに日本人として生活」したり、「日本国籍を失っている親の子供や孫」なのに「勘違いのまま日本国籍と誤認している」場合があり、自ら深く意図しないままに法令違反をしてしまうリスクがあります。外国籍を取得する方は、長期的な視点で熟慮をしたうえでの判断が求められます。

このあたりのケースについては、以下の「在ニューヨーク日本国総領事館」の説明が詳しいので、参考にしてください。

いろいろな考え方

先進国の多くは「二重国籍」を認めているのに、日本は二重国籍を認めていません。

この点は、国際的なキャリアを歩もうとしている日本人にとって、他国出身者と比べて非常に不利になる点であり、「日本も二重国籍を認めてほしい」という動きが存在するのも事実です。

また、これまでの実務的な対応から、「国籍法に違反してもばれない」あるいは「事実上の罰則がないから問題がない」という考え方をする方もいて、他国の国籍を得ていながらも、日本のパスポートを利用しているケースもあるようです。

実際に、筆者がオーストラリアに住んでいたときに、(誰も公にはっきりとは言いませんが)そのようなケースを耳にすることがありましたので、他国の国籍を取得しつつ日本の国籍を使っているケースは、意外に多いのかもしれません。

このあたりは、個人の法律への考え方に寄ることなので、当記事の範疇を越えますが、いろいろな考え方があるという点は事実として認識しておいてよさそうです。

2つのパスポート問題

国籍には、親の国籍により国籍が与えられる「父母両系血統主義」や、その国で生まれた子に国籍が与えられる「生地主義」などにより、(必要な手続きはありますが)生まれながらにして二重国籍の場合があります。

よく混同されがちですが、このような場合は、自ら希望して外国籍を得たわけではないので、上記の国籍法第11条の状況とは異なります。

生まれながらにしての二重国籍の場合は、国籍法第14条により、一定の期限までにいずれかの国籍を選択するように求められています。

国籍の選択については、法務省のサイトに詳しい説明がありますので参考にしてください。



この法務省の「国籍の選択について」の説明にある「日本」の国籍を選択をされる方2-(2)にあたるケース(国籍法第14条2項の後段)では、この選択宣言によって、外国籍を喪失する法制ではない外国の国籍を有する方については、この選択宣言後,当該外国国籍の離脱に努めなければならない(国籍法第16条1項)とあります。
努力であって「義務」ではないので、このようなケースでは二重国籍が可能となるように理解できます。

 

【コラムその1】合法的な二重国籍?

筆者の知り合いで、国籍が生地主義の外交で生まれた帰国子女の方々は、かなりの割合で日本と外国の2つのパスポートを大人になっても保持しており、外国を出国のときは外国のパスポートで出国、日本に入国のときには日本のパスポートで入国しているのです。一緒に出張したときなどに「不思議だな~」と感じていました。

(現在はパスポートの入国・出国のスタンプが省略という国も増えていますが)当時は入国・出国のスタンプはどの国でも普通にあることだったので、空港の入国審査官が彼らの日本のパスポートを見れば、「日本の入国&出国スタンプのみ」で「海外の行先での入国&出国がない」ことを不思議に思うはず、と感じたのです。

国籍法に照らしてみると、彼らはおそらく
・国籍法第14条1項にある「国籍の選択」をしていない、あるいは
・国籍法第14条1項の「国籍の選択」をしたけれども、国籍法第14条2項の後段にある「外国の国籍を放棄する旨の宣言」をしていない

という状態にあると推測されます。

これらの状態は、国籍法第14条に沿っているとはいえないものの、上記で説明した国籍法第11条の日本人が「自己の志望」や「外国の法令により」外国の国籍を選択した場合とは明らかに異なるので、「彼らは堂々2つのパスポートを使い分けていたのかな?」と推測しています。

尚、筆者は法律の専門家ではないので、二重国籍・国籍の選択についての判断が必要な場合には、必ず専門家にご相談されることをおすすめします。

 

【コラムその2】日本出身&外国籍のノーベル賞の受賞者たち

ノーベル賞の発表があるときに、元々日本人ではあっても、ノーベル賞受賞時には外国籍だった方が3名いらっしゃいます(2020年現在)。

  • 南部陽一郎 博士:1921年生まれ。2008年にノーベル物理学賞。東京大学で理学博士。1970年49歳のときに米国籍を取得。
  • 中村修二 博士:1954年生まれ。2014年にノーベル物理学賞。徳島大学大学院工学研究科修了。徳島大学より博士号。2005年に米国籍を取得。
  • カズオ・イシグロ氏:1954年生まれ。2017年にノーベル文学賞。幼少期に父親の仕事の関係でイギリスへ移住。1983年にイギリスに帰化。

南部氏と中村氏は国籍法第11条1項、イシグロ氏は国籍法第11条2項によって、おそらく外国籍を取得した時点で日本国籍を失っていると考えられます。

しかし、南部氏はシカゴ在住ではありましたが、晩年は自宅のあった大阪府豊中市で暮らしていたとされており、海外永住したのちに、晩年に日本に戻られたケースと思われます。

海外永住権取得で日本国籍を保持されている方は、日本人として日本へ戻ることは(手続き上は)問題なくできますが、外国籍を取得して日本国籍を失っている方が、日本へ長期帰国しようという場合には、在留資格の取得(長期滞在の場合)や帰化申請(永住帰国の場合)の手続きが必要になります。

晩年になってからの国籍関連の手続きは負担も大きいです。

海外の国籍を取得する場合には、「自分は最晩年をどこで過ごしたいか?」という点を考えて判断するようにしたいですね。

自分自身や家族の仕事・健康、自身の親の介護などを考えて、「いろいろな選択肢を残しておく」という視点は大切だなあと思います。

 

【コラムその3】日本の健康保険次第か?

海外諸国と比べて、日本の健康保険制度は非常に充実しています。

  • そのため、外国の永住権を得ても「外国籍までは取得しない」のは、日本の国籍があれば、日本に戻って住民登録をすれば、日本人として「日本の健康保険を利用できる」というメリットを考えての場合も多いかもしれません。
  • 莫大な社会保険費用によって日本の財政が年々と厳しい状況に陥っていることを考えると、「日本の健康保険だから安心」という状況がいつまで続くかは未知数です。海外移住ベーシック①でみたように、海外に永住する日本人が増加しつつあるなかで、海外永住者が日本に一時帰国・永住帰国して、健康保険料を納めていなかった状況で「日本の健康保険を多用する」というケースが増えていくと、健保財政がますます立ち行かなくなってしまうかもしれません。

今後、日本の行く先の不安要素が大きくなると、日本人の海外永住者のうち外国籍を取得する割合は増えていくのかもしれませんね。

 

いずれにしても、国籍というのは人生に関わる大きな問題です。

この記事で説明したことは、一般的な基礎情報・参考情報に過ぎませんので、ご自身や家族が置かれた状況に基づいて、「専門家に相談する」あるいは「関連窓口に相談&確認する」ようにしてください。

 

 

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まとめ:国籍に関する決断は長期的な視点を忘れずに

ここまで見てきて、「海外永住権で海外に住む」のと「外国の国籍を取得する」のでは、日本の国籍法において大きな違いがあることがわかったかと思います。

海外に長期で住んでいると、「永住権」も「国籍」も大きな違いを感じなくなってきますが、外国籍の取得に関しては、長期的な視点をもったうえでの総合的な判断が求められますね。

当記事が、海外移住、海外永住、外国籍取得などを考えている方の参考になれば幸いです!

 

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