「何をしたいかわからない」という気持ちのまま、「現状から抜け出したい」という思いに突き動かされて退職&転職をしてしまうと、転職後にも同じストーリーを繰り返してしまいがちです。
そんなときには、すぐに転職活動へ踏み出すのではなく、「キャリアの方向性」の迷いに光をあててくれる本を読んでみましょう。流されるのではなく、必ず立ち止まって考えることが大切です。
そうは言っても「どんな本を読んだらよいか・・・」という方のために、ここではキャリアの方向性に迷ったときに参考にしたい5冊の本をご紹介いたします。キャリアのトランジション(節目・転機)にあたって「自分のキャリアを考える」糸口を見いだすきっかけとしてくださいね。
当記事は、2019年4月時点の情報を参考にしています。
「キャリアをじっくり考える」ためのおすすめ書籍
転職をする際には、「キャリアの方向性」をしっかり見据えて、退職&転職へと舵取りをすることが大切です。キャリアという仕事に関わる部分だけでなく、「自分がどんな人生を歩みたいか?」という広い視点も必要になってきます。そのような広い視点で「キャリアをじっくり考える」ための本を選びました。
キャリア・アンカー
就職転職にあたって「キャリア・コンサルティング」を受ける場合もあると思いますが、(当サイトのこまち自身もそうなのですが)「自分自身の深い部分を他人に話したくない」という方もいると思います。
そんな方は、本を利用して「自分のほんとうの価値を発見する」ためのワークをしてみるのが、ひとつの選択肢となるでしょう。
ここでご紹介するキャリア・アンカーは、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院名誉教授のエドガー・H・シャインによって開発されたツールで、自分にとっての「キャリア・アンカー」を見つけ出すためのセルフワークの1冊です。神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏教授による翻訳です。(アンカーとは、英語のanchorのことで、錨(いかり)・支え・より所といった意味の単語です。)
キャリア・アンカーとは、その序文に以下のように説明されています。
あなたのキャリア・アンカーは、あなたがどうしても犠牲にしたくない、またあなたのほんとうの自己を象徴する、コンピタンス(訳注:有能さや成果を生み出す能力)や動機、価値観について、自分が認識していることが複合的に組み合わさったものです。自分のアンカーを知っていないと、外部から与えられた刺激誘因(訳注・報酬や肩書きなど)の誘惑を受けてしまって、後になって不満を感じるような就職や転職をしてしまうこともあります。
(キャリア・アンカー 第1章 序文より抜粋)
キャリアのアセスメントを受ける際、学校や会社が実施している場合に、無意識にバイアスをかけて回答してしまい、本当の自分とは違う結果になってしまうリスクがあります。その意味で、書籍の価格だけで、自分自身と向き合える「キャリア・アンカー」は、「自分を知る」ための一助になると思います。
キャリア・アンカーのワークによって、キャリアの悩みがすぐに解決するわけではありませんが、このようなワークを使って「自分と深く向き合う」ことが、キャリアの方向性を見出す突破口へつながっていくでしょう。
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへは、技術経営の分野でたくさんの名著を記したハーバード大学のクリステンセン教授が、最後の授業で伝えた「経営戦略を人生指南書へ落とし込んだ一冊」です。
この本のなかでは、企業の能力と同様に、個人の能力も「資源」「プロセス」「優先事項」の3つが組み合わさったものとして捉えようという試みが説明されています。このように捉えることは、自分の資源を活かして「人生で何をできるか?」「手の届かないことは何か?」を知る助けになるでしょう。
大学を卒業していこうという学生向けに書かれた本ですが、世代を問わずに「やりたいことが見つからない」「人生の目的を考えたい」という方にとって、参考になる視点があるでしょう。
この本に書かれている視点は、以下の記事でも触れましたので、興味を持たれた方は参考にしてくださいね。
21世紀を幸せに生き抜くキャリアの視点「実現力・移動力・幸せ感」
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未来をつくるキャリアの授業
東京大学が使用すキャリアデザインの教科書として知られている未来をつくるキャリアの授業は、1000人を超える相談者の転身をサポートしてきたキャリアコンサルタントによる一冊です。
若くして好きなことで多くの収入を得ている成功者の成功のカギは、「キャリア設計」にあるという論点のもとに、キャリアの疑問、キャリアのワナ、キャリアの鉄則、キャリアの飛躍術、キャリアの設計法などが、具体例と共にわかりやすく説明されています。
「キャリアビジョンは自分の「好き」で描く」「なかなか自分の「好き」がわからない方へのお勧め方法」などのアドバイスは、キャリアの方向性に迷ってしまったという場合に参考になるでしょう。
また、人材エージェントや転職リテラシーについての説明もあるので、初めて転職しようと考えている方にも一読をおすすめします。
転職はもちろん、新たなスキルの勉強、資格取得、留学などを考えるときにも、先に「キャリア設計」があることが大切です。じっくりとキャリア設計をしておけば、多少たいへんなことがあっても乗り切ることができるはずです。
働くひとのためのキャリア・デザイン
働くひとのためのキャリア・デザインは、上記でご紹介した「キャリア・アンカー」の訳者である神戸大学大学院教授の金井壽宏先生による一冊です。
長いキャリアの歩みの中で、「節目にはしっかりとデザインをする」「節目と節目の間には、多少流れに身を任せる(ドリフトする)」という考え方が紹介されています。
新書とは思えないほどに、キャリアに関するさまざまな研究と洞察が記されており、学生からミドル・シニアに至るまで、それぞれの視点で学ぶところが大いにある内容です。教授自身が著書のなかで述べているように、研究対象に多少の偏りはあるものの、「キャリアの節目にはしっかり立ち止まってデザイン」ことから逃げてはいけない、ということが一環して貫かれているので、心に響きます。
この本の中で「最低必要努力(MER:Minimum Effort Reuiqrement)」というものがあると思う、と「よいガマン」が紹介されています。退職&転職を考えるときに、「十分な努力をする前に諦めていないか?」「その仕事の魅力や自分の能力が発揮される前に転職しようとしていないか?」と、ちょっと考えてみるとよいですね。
ワーク・シフトー孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉は、世界的ベストセラーであるLIFE SHIFT(ライフ・シフト) の著者として知られているロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンによる、これからの近未来の働き方予測と選択肢に関する一冊です。
「ライフシフト」より先に著された「ワークシフト」では、2011年に書かれた本で、2025年の「働き方」を予測しています。すでにその多くが現実となってきている今、あらためて読んでみると、「自分はどのような働き方を選んでいくか?」を考えさせられます。
「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生があり、それを可能にするのが「ワークシフト」できるかどうか、と説かれ、3つのワークシフトが詳しく説明されています。特に第一のシフトである「ゼネラリストから連続スペシャリストへ」というシフトは、キャリアをどのようにデザインしていくかのトランジション(転機・節目)に際して、心に留めておきたい視点を与えてくれます。
この本では、新しい時代のワークスタイルがたくさん紹介されていますが、いろいろな選択肢を理解し、そのなかから自分で選択をして未来を築いていくことが重要という視点は、ここでご紹介した他の4冊とも共通する点です。
まとめ
「自分が何をしたいか」がわからない人は、いきなり転職活動を始めるのではなく、まずはキャリアの方向性を確認してみましょう。「キャリア・デザイン」をして次の一歩を踏み出すことができれば、キャリアの迷いがぐっと減って、転職後に同じストーリーを繰り返すことを避けることができます。
ここでご紹介した5冊は、必ずしも新しい本ではありませんが、キャリアを真剣に考える人にとっては、何らかの光を与えてくれるでしょう。
当記事が、キャリアの方向性に迷っている方の参考になれば嬉しいです!